概念フレームワークにおける「認識」は、以下のように定義されています。
Recognition is the process of incorporating in the balance sheet or income statement an item that meets the definition of an element and satisfies the criteria for recognition set out in paragraph 4.38. It involves the depiction of the item in words and by a monetary amount and the inclusion of that amount in the balance sheet or income statement totals. Items that satisfy the recognition criteria should be recognised in the balance sheet or income statement.
The failure to recognise such items is not rectified by disclosure of the accounting policies used nor by notes or explanatory material.
認識(Recognition)とは、前回説明した収益・費用・資産・費用といった構成要素(element)の定義を満たし、かつ、一定の認識規準を満たす項目について、これを貸借対照表や損益計算書に組み入れることを意味します。
そして、一定の認識基準は、段落4.38で以下のように記述されています。
An item that meets the definition of an element should be recognised if:
(a) it is probable that any future economic benefit associated with the item will flow to or from the entity; and
(b) the item has a cost or value that can be measured with reliability.
ここでは2つの条件があります。まず最初に、将来の経済的便益(Future economic benefit)についてその流入可能性が高い(Probable)ということです。さて、ここで悩ましいのは、可能性を表すProbableという単語です。一概に言えませんが、「おおよそ70%~80%程度の可能性」というイメージでよいかと思います。
ちなみに、IFRSの中には可能性を表す単語として、沢山の単語が使われています。例えば、"Highly Probable", "Remote", "Reasonably Possible","Expected","Virtually Certain"といった用語が、それぞれ異なった可能性を示す用語として使われています。微妙なニュアンスは、ネイティブであれば当然分かるのでしょうが、IFRSが世界中で適用されることから、IFRSは様々な言語に翻訳されます。この辺りの微妙なニュアンスを翻訳によってどれだけ正確に伝えられるのか、やや疑問が残ります。
次は、上記の認識基準に従った財務諸表項目の認識です。
資産(Assets)は、将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高く、かつ、その価値等を信頼性をもって測定できる場合に、認識されます。企業が1,000万円の商品を掛けで販売すれば、近い将来(例えば、1~2ヵ月後)に、1,000万円という現金(経済的便益)が流入することが見込まれますから、1,000万円の売掛金を資産として計上するということになります。
An asset is recognised in the balance sheet when it is probable that the future
economic benefits will flow to the entity and the asset has a cost or value that can
be measured reliably.
次は負債(Liabilities)です。負債は、現在の債務を返済することによって経済的便益を有する資源が企業から流出する可能性が高く、返済金額が信頼性をもって測定できる場合に認識されます。現在、1億円の銀行借入金があれば、いずれ1億円の資金(経済価値)が会社から払われる(流出する)ことになりますから、負債(借入金)として認識されることになります。
A liability is recognised in the balance sheet when it is probable that an outflow of resources embodying economic benefits will result from the settlement of a present obligation and the amount at which the settlement will take place can be measured reliably.
収益(Income)は、資産の増加又は負債の減少に伴って将来の経済的便益の増加が生じ、かつ、その増加を信頼性をもって測定できる場合に認識されることになります。
Income is recognised in the income statement when an increase in future economic benefits related to an increase in an asset or a decrease of a liability has arisen that can be measured reliably.
収益(Income)が認識される場合、同時に資産の増加や負債の減少が認識されることになります。先の資産(売掛金)の例をとれば、売掛金が認識されると同時に売上という収益が認識されることになります。また、債務を免除してもらうと、債務免除益という収益が認識されると同時に、同じ額だけ負債が減少することになります。
最後に、費用(Expenses)の認識です。
費用は、資産の減少又は負債の増加に関連する将来の経済的便益の減少が生じ、かつ、それを信頼性をもって測定できる場合に認識されます。また、費用が認識される場合、同時に、資産の減少や負債の増加を伴います。電気代の支払い(現金)や賞与の支給(未払賞与の支給)等を思い浮かべれば、費用の認識基準がイメージできると思います。
Expenses are recognised in the income statement when a decrease in future economic benefits related to a decrease in an asset or an increase of a liability has arisen that can be measured reliably.
資産、負債、収益、費用の認識基準に合致したものは、貸借対照表(Balance Sheet)または損益計算書(Income Statement)といった財務諸表(Financial Statements)に漏れなく計上する必要があり、意図的に除外したりすることは許されません。
一方、上記の認識基準を満たしていないものについて、何もしなくて良いということではありません。上記の認識条件を満たさないものについても、財務諸表利用者の経済的意思決定に影響を及ぼす場合には、注記等で開示を行う旨が記載されています。
少し長くなりましたが、今回は以上です。次回は「測定(Measurement)」となります。
清水公認会計士事務所(Shimizu CPA Office)
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