■ 資産・負債・資本
前回説明したとおり、概念フレームワークでは資産は以下のように定義されています。
上記の定義では、future economic benefits(将来の経済的利益)が企業に流入することが見込まれることが資産の要件になっています。そして、フレームワークではこれをさらに具体的に以下のように規定しています。An asset is a resource controlled by the entity as a result of past events and from which future economic benefits are expected to flow to the entity.
In particular, the expectation that future economic benefits will flow to or from an entity must be sufficiently certain to meet the probability criterion in paragraph 4.38 before an asset or liability is recognised.
資産の場合、将来期待される経済的利益の流入(負債の場合は流出)について、段落4.38の条件に合致することが要求されます。この段落4.38では財務諸表項目の認識(recognition)が定義されますが、こちらは次回扱います。
また、資産・負債・資本の定義に当てはまるかどうかは、法的形式だけでなく、根底にある経済実態に注目すべきということも記載されています。
In assessing whether an item meets the definition of an asset, liability or equity, attention needs to be given to its underlying substance and economic reality and not merely its legal form.
前回、Equity(持分)は資産から負債を差し引いた「残余」なので「単数形である」というお話をしました。しかし実際は、貸借対照表において「持分」はいくつかに細区分(株主資本、利益剰余金・・・)されて表示されます。
Although equity is defined in paragraph 4.4 as a residual, it may be sub-classified in the balance sheet.
■ 収益・費用
損益計算におけるIncomeは、RevenueとGainsに区分されるということです。日本語ではIncomeとRevenueを明確に区別する適切な訳語がないので、Income=広義の収益、Revenue=狭義の収益とします。そうすると、Income(広義の収益)=Revenue(狭義の収益)+Gains(利得)となります。Revenueは企業の通常の活動によって生じるものです。
The definition of income encompasses both revenue and gains. Revenue arises in the course of the ordinary activities of an entity and is referred to by a variety of different names including sales, fees, interest, dividends, royalties and rent.
他方、Gains(利得)は以下のように、Revenueの条件を満たさないIncome(広義の収益)として定義されます。Gains(利得)の具体例としては、固定資産や投資有価証券の売却益があります。
Gains represent other items that meet the definition of income and may, or may not, arise in the course of the ordinary activities of an entity. Gains represent increases in economic benefits and as such are no different in nature from revenue. Hence, they are not regarded as constituting a separate element in this Conceptual Framework.
要するにIncome(広義の収益)=Revenue(通常の活動から生ずるもの)+Gains(通常の活動以外から生ずるもの)ということになります。
Expenses(費用)も同様に、Expenses(狭義の費用)とLosses(損失)に区分されます。Expensesは企業の通常の活動によって生じるもの、Lossesはそれ以外の理由で生じるものです。
すなわち、
Expenses(広義の費用)=Expenses(通常の活動から生ずるもの)+Losses(通常の活動以外から生ずるもの)となります。
The definition of expenses encompasses losses as well as those expenses that arise in the course of the ordinary activities of the entity. Expenses that arise in the course of the ordinary activities of the entity include, for example, cost of sales, wages and depreciation. They usually take the form of an outflow or depletion of assets such as cash and cash equivalents, inventory, property, plant and equipment.
上記の定義は何となくわかりにくいのですが、実はIFRSでは上記で説明した項目(収益や費用の区分)について、あまり厳密に考えていないのです。というのも、Gains(利得)やLosses(損失)は、economic benefit(経済的利益)を増加あるいは減少させるという点では、revenue(狭義の収益)やexpenses(狭義の費用)と何ら変わりがないからです。経済的利益の増減自体に着目し、内容は細かく区分しないということがIFRSの特徴となっているのです。
上記に関連して、日本の会計基準や米国会計基準(USGAAP)には特別損益項目(特別利益・特別損失)がありますが、IFRSでは特別損益項目を認めていません。Frameworkの記述からもその理由がうかがえます。
今回は以上です。
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