今回は概念フレームワークの6回目。ようやく財務諸表の内容に入ります。なお、これ以後は、1989年に作成された概念フレームワークが現在でもそのまま残っています。
Frameworkの4.2では、以下のように記載されています。
Financial statements portray the financial effects of transactions and other events by grouping them into broad classes according to their economic characteristics. These broad classes are termed the elements of financial statements. The elements directly related to the measurement of financial position in the balance sheet are assets, liabilities and equity. The elements directly related to the measurement of performance in the income statement are income and expenses. The statement of changes in financial position usually reflects income statement elements and changes in balance sheet elements; accordingly, this Conceptual Framework identifies no elements that are unique to this statement.
貸借対照表におけるfinancial position(財政状態)に関連する項目としてassets(資産)、liabilities(負債)、equity(持分)が、損益計算書におけるperformance(業績)に関連する項目としてincome(収益)、費用(espenses)が挙げられています。
● Financial position(財政状態)
ここでは、貸借対照表を構成する資産Assets(資産)、Liabilities(負債)、Equity(持分)の概念が説明されます。
The elements directly related to the measurement of financial position are assets, liabilities and equity.
まず、資産です。簡単に言えば、資産とは過去に行われた支出であって企業がそれを自由に利用でき、かつ、将来企業にeconomic benefits(経済的利益)をもたらすことが期待される資源です。Frameworkでは以下のように定義されています。
工場を例にとります。企業は、工場で生産した製品を販売することで、利益を生み出します。したがって、工場の土地、建物、設備、在庫等は資産になるわけです。一方、在庫が陳腐化してまったく売れる見込みがなくなってしまえば(経済的便益が得られませんので)資産には該当しないことになります。 この場合には、資産の価値が引き下げられ、損失が計上されます。
次は負債です。 簡単に言えば負債とは、過去の事象(=取引等)から生じた現在の債務で、この債務を決済(返済)にあたって、企業の有する資源(資金)の流出を伴うものです。Frameworkでは以下のように定義されています。
A liability is a present obligation of the entity arising from past events, the settlement of which is expected to result in an outflow from the entity of resources embodying economic benefits.
例えば、信用で商品を購入すると支払期日までに供給業者(suppliers)に対して代金を支払う義務が生じます。すなわち、「買掛金」は、その返済のために現金流出を伴いますから負債となるわけです。
次は持分です。持分とは、企業の持つ資産から負債を差し引いた残余の持分(residual interest) です。FrameworkではEquity(持分)を差額概念として定義しています。
Equity is the residual interest in the assets of the entity after deducting all its liabilities.
ちなみに、interestには興味や利息といった意味の他に、上記のように「分け前(持分)」という意味もあります。
● Performance(業績)
次は、損益計算書の構成要素である収益(income)と費用(expense)です。Frameworkには以下のように記載されています。
Profit is frequently used as a measure of performance or as the basis for other measures, such as return on investment or earnings per share. The elements directly related to the measurement of profit are income and expenses. The recognition and measurement of income and expenses, and hence profit, depends in part on the concepts of capital and capital maintenance used by the entity in preparing its financial statements.
capital maintenance(資本の維持)という概念は後に説明するとして、業績(performance)や利益(profit)を測る要素として「収益」と「費用」があるということが書かれています。
まず収益です。収益とは、ある会計期間において資産の流入・資産価値の増加または負債の減少といった形で現れる経済的利益の増加で、出資者からの拠出(資本の払込)以外の原因で持分の増加を伴うものです。Frameworkでは以下のように定義されています。
Income is increases in economic benefits during the accounting period in the form of inflows or enhancements of assets or decreases of liabilities that result in increases in equity, other than those relating to contributions from equity participants.
収益の具体例としては、商品の販売収益を思い浮かべれば上記の概念は理解できると思います。なお、損益計算書は期間損益を表現しますので、accounting period(会計期間)という用語が登場します。また、会社の設立や増資等による持分増加は、いわゆる資本取引ですから収益にはなりません。
次は費用です。費用とは、ある会計期間において資産の流出・資産価値の減少または負債の発生といった形で現れる経済的利益の減少であり、出資者に対する分配以外の原因で持分の減少を伴うものです。Frameworkでは以下のようになっています。
Expenses are decreases in economic benefits during the accounting period in the form of outflows or depletions of assets or incurrences of liabilities that result in decreases in equity, other than those relating to distributions to equity participants.
費用の具体例としては、人件費(給与)を思い浮かべれば上記の概念は理解できると思います。なお、出資の払い戻しや配当による持分減少は費用にはなりません。
さて、今回はこれで終わりですが、最後に英語の単数・複数のお話を・・・。
資産=Assets、負債=Liabilitiesは通常複数形になります。資産には現金預金・売掛金・棚卸資産・土地等様々な形態があります。一方、負債には買掛金・借入金・預かり金・未払金・借入金等の形態があります。資産や負債の形態は複数ありますので複数形になるわけです。
一方、持分=Equityは単数形です。 これは、持分が(会社を清算した結果の)残った財産を意味するからです。すなわち、様々な資産や負債を整理して最後に残ったものが持分ということになりますので、持分の形態(内容)はすでに問題ではなくなっているということで、単数形になっているわけです。なお、equitiesと複数形にしてしまいますと、普通株式を意味しますので注意が必要です。
An asset is a resource controlled by the entity as a result of past events and from which future economic benefits are expected to flow to the entity.
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