2011年2月27日日曜日

概念フレームワーク(1)

今回から数回にわたって、IFRSを理解する上で重要な概念フレームワーク(以下、フレームワーク)の内容を見ていきます。今回はフレームワークのIntroductionの部分です。なお、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が共同して、現在フレームワークの改訂作業を行っています。改定された部分(一部)が昨年公表されていますが、以下の説明は基本的に従来のフレームワーク(1989年)を前提にしています。

1.フレームワークの目的フレームワークは、財務諸表を作成・開示する際の基本的概念を提供するものです。フレームワークは、新しい国際会計基準を作成したり、現行の国際会計基準を修正したりする際の指針としても役立つものであるとともに、財務諸表の利用者が財務諸表を解釈したり、あるいは会計監査人(公認会計士や監査法人等)が「財務諸表がIFRSに準拠して作成されているか否か」を判断をする(=監査意見を形成する)際にも役立つなどといった様々な目的があるとされています。

ここで一つ注意すべきことは、フレームワークはIFRSの一部ではないことです。フレームワークは、会計上の特定項目に関する測定や開示については何も規定していません。また、国際会計基準とフレームワークの規程が異なっている場合には、国際会計基準が優先して適用されることになります。実際のフレームワーク(英文)には、下記のように記載されています。

This Framework is not an International Accounting Standard and hence does not define standards for any particular measurement or disclosure issue. Nothing in this Framework overrides any specific International Accounting Standards.



The Board of IASC recognises that in a limited number of cases there may be a conflict between the Framework and an International Accounting Standard. In those cases where there is a conflict, the requirements of the International Accounting Standard prevail over those of the Framework.



2.フレームワークの範囲

財務諸表(Financial statements)には、貸借対照表(Balance Sheet), 損益計算書(Income Statement), キャッシュフロー計算書(Statement of Cash Flows)に加え、注記(Notes)や補足明細表や補足情報(Supplementary Schedules and Information) といったものがあります。こうした財務諸表は、(会社内部で使われることはあるものの)基本的には外部公表のため作成されます。フレームワークでは財務諸表の利用者として主に投資家(Present and Potential Investors)が想定されています。

もちろん、投資家以外にも、従業員(Employees)、金融機関等のお金の貸し手(Lenders)、供給業者(Suppliers)、顧客(Customers)、政府や政府機関(Government and their Agencies)といった利害関係者(Stakeholders)も財務諸表の利用者として考えられます。しかし、すべての利害関係者の要求を完全に満足させるような(単一の)財務諸表は作ることはできません。一方、すべての利用者に共通する(最低限の)要求水準を満たす財務諸表を作成することは可能です。そこで、企業に対する資本(Risk Capital)の提供者である投資家のニーズを満たすような財務諸表を作成することになります。投資家のニーズを満たす財務諸表は、他の利害関係者の基本的なニーズも満たすことが出来ると想定されています。

As investors are providers of risk capital to the entity, the provision of financial statements that meet their needs will also meet most of the needs of other users that financial statements can satisfy.



フレームワークで取り扱うのは、以下の4つであり、この内容がフレームワークの中心になります。

(1) 財務諸表(財務報告)の目的
(2) 有用な財務情報の質的特性および制約
(3) 基礎となる前提
(4) 財務諸表の構成要素の定義、認識、測定
(5) 資本と資本維持の概念

次回からは、フレームワークの内容を少し細かく見ていきたいと思います。