2013年9月27日金曜日

非嫡出子の相続分の違憲決定に伴う相続税の取り扱い(速報)

1.平成25年9月4日の最高裁判所の決定について

民法の規定では、法律上婚姻関係のない両親から生まれた「婚外子」(非嫡出子)の相続については、「法律婚の子(嫡出子)の2分の1」とする旨が規定されています。

民法第900条4号
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
 
この民法規定を巡る裁判(平成13年7月に死亡した被相続人の遺産に関する裁判)で、最高裁は9月4日、「憲法に違反する」として非嫡出子の相続分に関する規定(非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする規定)を無効とする判断を下しました。この結果、民法の相続分において、嫡出子と非嫡出子の差はなくなりました。


2.最高裁の決定を受けた相続税の扱い

(1)原則的取扱い

今回の最高裁の決定(違憲決定)を受けて、国税庁から相続税の扱いが公表されました。
今回の決定は、『確定的なものになった法律関係に影響を及ぼすものではない』と判示されていることから、決定の日(9月4日)を境に、違憲決定前(9月4日以前)か決定後(9月5日以後)かによって、取り扱いが分かれることになります。

すなわち、9月4日以前に相続税が確定している場合には、非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする規定(以下、「嫡出に関する規定」)があるものとして相続税の計算・申告を行い、9月5日以後に相続税額が確定するものについては、「嫡出に関する規定」がないものとして相続税の計算・申告を行うことになります。


(2)例外的取扱い

原則的取扱いでは、9月4日と9月5日で、「嫡出に関する規定」の扱いに差が出ることになります。しかし、たった1日の差で相続税額に差が出るというのも、やや不公平感があります。そこで、9月4日以前に一旦確定した税額が、9月5日以後に変動するような場合には、「嫡出に関する規定」とする規定)がないものとして相続税の計算・申告ができることとされました。最高裁の決定事例が平成13年7月の相続であったため、相続税法でも平成13年7月以後に発生した相続が対象となっています。

例えば、平成25年8月31日に相続税の申告書を提出した場合を考えます。この場合、9月5日以後に新たに財産が見つかったり(申告漏れ)、評価に誤りが判明したため、修正申告書や更正の請求書を提出するとします。あるいは、9月5日以後に税務署による更正や更正決定があったとします。この場合には、一旦決定した税額が9月5日以後に変動するので、嫡出に関する規定がないものとして相続税額が計算されます。

ただし、「嫡出に関する規定」だけを理由とした更正の請求はできません。すなわち、「嫡出に関する規定」以外の理由で、確定した税額が変動することが必要になるわけです。

なお、平成25年9月4日以前の相続について、相続税の計算において「嫡出に関する規定」がないものとして扱われたとしても、『民法上の相続分』の扱いとは別の話であるという点を申し添えます。

上記の相続税上の扱いをまとめると、次の表のとおりになります。




詳細については、国税庁の以下のサイトをご覧ください。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h25/saikosai_20130904/index.htm




清水公認会計士事務所(Shimizu CPA Office

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