2011年10月13日木曜日

概念フレームワーク(5)

今回は、IFRSの5回目。「情報の制約要因」と「基礎となる前提」です。
★ The cost constraint on useful financial reporting( 有用な財務情報に関するコスト制約)

 簡単に言うと、、財務情報の提供にはコストがかるのでコストが(情報提供の)制約要因になるということです。必要以上に詳細で厳密な情報収集を行って財務諸表を作成すれば、企業の費用負担は膨大なものになります。逆に、必要な情報が提供されなければ、情報の利用者が(自力で情報を探すなど)不利益を被ります。要は、情報の提供者・利用者双方の費用対効果を勘案する必要があるということになります。


★ Underlying Assumptions(基礎となる前提)

 財務諸表の基礎となる前提として従来のFrameworkでは、①Going Concern(継続企業)と②Accrual Basis(発生主義)が挙げられていました。

 実はこの部分は現在改訂途中になっており、現行のFrameworkの本文では①のGoing Concern(継続企業)だけが暫定的に残っています(Accrual Basisについては、改訂後のFrameworkの他の場所で説明されています。)これは、進行中の改訂作業で「FrameworkからUnderlying Assumptions(基礎となる前提)という項目自体をなくしてしまう」という方向が示されたからです。

 とは言え、こうした前提自体が無くなってしまうということではありません。実は、IAS(国際会計基準)第1号(Presentation of Financial Statements:財務諸表の表示)の方に、発生主義や継続企業を含めていくつかの基礎となる前提が説明されており、恐らく、こちらの方へ集約することになると思われます。

Frameworkの解説ということからすると、(将来なくなる可能性の高い)この項目の説明は不要なのかもしれませんが、一応、従来のFrameworkに則って2つの基礎的な前提を説明します。


(1)Accrual Basis(発生主義)

発生主義とは、会計上の取引は現金の入出金に関わらず、その取引が発生した時点で認識され、会計帳簿に記録されるという考え方です。例えば、商品を購入する契約を締結した場合、現金の支払いがなくても)「仕入」と「買掛金(仕入債務)」を取引として記録するということです。


(2)Going Concern(継続企業)

 継続企業の前提とは、企業は清算を予定しておらず、将来にわたって事業活動を継続するという前提です。通常は、継続企業の前提に基づいて財務諸表が作成されますが、仮に近い将来清算又は事業の大幅縮小が想定される場合、継続企業とは異なる前提で財務諸表が作成されることになります。すなわち、継続企業の前提が失われると、企業の継続価値でなく清算価値が焦点となりますので、貸借対照表項目をすべて時価で評価するといったことになります。

今回は以上です。

2011年10月6日木曜日

概念フレームワーク(4)

★ 基本的特性を補完する4つの特性

 前回から随分時間が経過してしまいましたが、今回は前回とりあげた基本的特性である、① Relevance(目的適合性)と②Faithful Presentation(表現の忠実性)を補完する4つの特性を紹介します。4つの特性は、(イ) Comparability(比較可能性)、(ロ) Verifiability(検証可能性)、(ハ) Timeliness(適時性) (ニ) Understandability(理解可能性)です。


(イ)Comparability(比較可能性)

  比較可能性とは、他企業との企業間比較や(同一企業の)期間比較を適切に行うことができるということです。比較可能性と似ている概念として、Consistency(継続性)があります。Consistency(継続性)とは、一度採用した会計方針は(正当な理由がない限り)変更してはならないという原則です。例えば、減価償却方法を「去年は定額法、今年は定率法、来年は定額法・・・」などと恣意的に変更してしまうと、期間損益が大きく歪められ、比較可能性が確保できなくなります。Consistency(継続性)は、、Comparability(比較可能性)という目的を達成するのに役立つものです。


(ロ)Verifiability(検証可能性)

 この概念はちょっと分かりにくい概念です。Verifiability(検証可能性)という概念は、従来の概念Frameworkにはなかった概念で、米国の会計基準設定主体であるFASBのFrameworkから取り入れられた概念です。

 Verifaibility(検証可能性)とは簡単に言えば、様々な知識レベルを持つ独立した財務諸表利用者が到達する一定のConsensus(合意)を意味します。単純な例で説明すると、ある企業の財務諸表に現金が100万円計上されているとします。このことは「実際に現金を数えれば、誰が数えてもピッタリ100万円になる。」ということです。Aさんが数えると99万円、Bさんが数えると101万円になってしまうようでは、Verifiability(検証可能性)が確保されているとは言えません。

 もうひとつ例を挙げます。財務諸表では期末在庫が5,000万円と計上され、この会社は棚卸資産の評価方法として「先入先出法」を採用しているとします。この場合には、一定の情報(単価と数量の情報)が与えられれば、(先入先出法という前提で)誰が計算しても期末の在庫は5,000万円になるということです。

 以上2つは単純な例ですが、実際には会計上の見積もりや判断を伴うことが多いので、必ずしも万人が合意できるケースばかりではありません。例えば、2番目の例では、(その会社の業績を適正に示すには)先入先出法ではなく、(移動)平均法の方が良いと考える人が少数ながら居るかもしれません。その場合でも、検証可能性が一応確保できていると考えられます。


(ハ)Timeliness(適時性)

Timeliness(適時性)とは、情報の迅速性のことです。財務諸表利用者が経済的意思決定を行う際、意思決定に影響を与える情報が意思決定時点で利用可能であるか否か、ということです。


(ニ)Understandability(理解可能性)

 簡単に言えば、財務諸表利用者にとって理解し易いような情報を提供するということです。明確でかつ簡潔に財務情報を分類・表示することによって、財務情報は理解し易くなります。


前回と今回の内容をまとめると下記の図のようになります。

★ 基本的特性を補完する4つの特性

 前回から随分時間が経過してしまいましたが、今回は前回とりあげた基本的特性である、① Relevance(目的適合性)と②Faithful Presentation(表現の忠実性)を補完する4つの特性を紹介します。4つの特性は、(イ) Comparability(比較可能性)、(ロ) Verifiability(検証可能性)、(ハ) Timeliness(適時性) (ニ) Understandability(理解可能性)です。


(イ)Comparability(比較可能性)

  比較可能性とは、他企業との企業間比較や(同一企業の)期間比較を適切に行うことができるということです。比較可能性と似ている概念として、Consistency(継続性)があります。Consistency(継続性)とは、一度採用した会計方針は(正当な理由がない限り)変更してはならないという原則です。例えば、減価償却方法を「去年は定額法、今年は定率法、来年は定額法・・・」などと恣意的に変更してしまうと、期間損益が大きく歪められ、比較可能性が確保できなくなります。Consistency(継続性)は、、Comparability(比較可能性)という目的を達成するのに役立つものです。


(ロ)Verifiability(検証可能性)

 この概念はちょっと分かりにくい概念です。Verifiability(検証可能性)という概念は、従来の概念Frameworkにはなかった概念で、米国の会計基準設定主体であるFASBのFrameworkから取り入れられた概念です。

 Verifaibility(検証可能性)とは簡単に言えば、様々な知識レベルを持つ独立した財務諸表利用者が到達する一定のConsensus(合意)を意味します。単純な例で説明すると、ある企業の財務諸表に現金が100万円計上されているとします。このことは「実際に現金を数えれば、誰が数えてもピッタリ100万円になる。」ということです。Aさんが数えると99万円、Bさんが数えると101万円になってしまうようでは、Verifiability(検証可能性)が確保されているとは言えません。

 もうひとつ例を挙げます。財務諸表では期末在庫が5,000万円と計上され、この会社は棚卸資産の評価方法として「先入先出法」を採用しているとします。この場合には、一定の情報(単価と数量の情報)が与えられれば、(先入先出法という前提で)誰が計算しても期末の在庫は5,000万円になるということです。

 以上2つは単純な例ですが、実際には会計上の見積もりや判断を伴うことが多いので、必ずしも万人が合意できるケースばかりではありません。例えば、2番目の例では、(その会社の業績を適正に示すには)先入先出法ではなく、(移動)平均法の方が良いと考える人が少数ながら居るかもしれません。その場合でも、検証可能性が一応確保できていると考えられます。


(ハ)Timeliness(適時性)

Timeliness(適時性)とは、情報の迅速性のことです。財務諸表利用者が経済的意思決定を行う際、意思決定に影響を与える情報が意思決定時点で利用可能であるか否か、ということです。


(ニ)Understandability(理解可能性)

 簡単に言えば、財務諸表利用者にとって理解し易いような情報を提供するということです。明確でかつ簡潔に財務情報を分類・表示することによって、財務情報は理解し易くなります。


前回と今回の内容をまとめると下記の図のようになります。