2013年5月7日火曜日

事業承継税制の改正について


本日は、平成25年税制改正の中から、『事業承継税制』に関する改正ポイントを説明いたします。

1.事業承継税制とは何か?

事業承継税制とは、端的に言えば、非上場株式(自社株式)に課される税金(贈与税や相続税)の全部または一部を繰延べできる制度(=納税猶予制度)です。自社株式の相続や贈与時の時価は、予想以上に高くなるのが通常です。他方、自社株は流通性がほとんどありませんから、換金できない株式に高額な贈与税や相続税が課されると、事業承継に支障が出る可能性があります。こうした事態に対応して、一定の条件を満たす場合、中小企業の後継者が、現経営者から会社の株式を承継する際、相続税・贈与税が軽減(相続:80%分、贈与:100%分)される制度が事業承継税制(納税猶予制度)です。


2.制度適用のための一定の条件とは?

事業承継税制は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)」を基礎とした制度です。円滑化法は、① 遺留分に関する民法の特例、② 事業承継時の金融支援措置、③ 事業承継税制の基本的枠組み を盛り込んだ事業承継円滑化に向けた総合的支援策の基礎となる法律ですが、③の事業承継税制が納税猶予制度に該当します。
すなわち、税法が円滑化法を借用して、円滑化法の一定の要件を満たす中小企業について、納税猶予の適用を受けることができるように制度化されているのです。

事業承継税制(納税猶予制度)の適用要件はかなり複雑ですので、ここで詳しく説明することはいたしませんが、ご興味のある方は、下記の中小企業庁のサイトで『最新版(平成25年度)の中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル』をご覧ください。

☛ 中小企業庁:中小企業経営承継円滑化法 申請マニュアルについて

円滑化法について一点注意すべきなのは、この法律が「中小企業の雇用の維持・確保」を重視しているという点が挙げられます。すなわち、「中小企業の雇用確保 → 円滑な事業承継 → 贈与税・相続税の負担軽減 → 納税猶予」という流れが根底にあることに留意する必要があります。言い換えると、(後半の)「(経営者の)税負担軽減 → 納税猶予」という目的だけで、設定された法律ではなく、(円滑化法の)納税猶予が認められる「一定の条件」はかなり厳し目に設定されているということになります。

今回の改正では、この厳しい条件の一部が緩和されました。


3.改正点(要件緩和)

平成25年度税制改正で事業承継税制の適用要件が以下の通り緩和されました。

(1)事前確認の廃止:手続の簡素化(平成25年4月以後)
従来、制度利用の前に経済産業大臣の「事前確認」を受ける必要ありましたが、平成25年4月後は、事前確認を受けていなくても制度利用が可能になりました。

(2)親族外承継の対象化~親族以外にも拡大(平成27年1月以後)
現行では、後継者は現経営者の親族に限定されていますが、改正後は親族外承継も対象となります。

(3)雇用の8割維持要件の緩和(平成27年1月以後)
現行では、雇用の8割以上を「5年間毎年」(毎年度末)維持することが要件とされていますが、雇用の8割以上維持要件が「5年間平均」となります。例えば、現行は5年間で1回でも8割要件をクリアできないと納税猶予が打ち切りとなりましたが、改正後は、8割要件をクリアできない年があっても、5年間平均でクリアできればよいことになります。

(4)納税猶予打ち切りリスクの緩和(平成27年1月以後)
現行では、要件が満たせずに納税猶予が打ち切られた場合、納税猶予額に加え利子税(年2.1%)の支払いが必要です。平成27年1月以後は、①利子税率が引下げられる(2.1%→0.9%)とともに、②承継5年超で5年間の利子税が免除されることになりました。

また、事業の再出発にも配慮がなされました。現行は、相続・贈与から5年後以降は、後継者の死亡又は会社倒産により納税が免除されています。改正後は、民事再生、会社更生、中小企業再生支援協議会での事業再生の際にも、納税猶予額を再計算し、一部免除されることになります。

(5)役員退任要件の緩和:現経営者の退任要件を緩和(平成27年1月以後)
現行では、(贈与税の納税猶予の適用を受ける際)現経営者は、贈与時に役員を退任すること(いわば、「生前隠居」)が必要です。改正後は、贈与時の役員退任要件が代表者退任要件に緩和され、現経営者は(贈与後も引き続き)有給役員として残留することが可能となります。

(6)債務控除の計算方法の変更(平成27年1月以後)
現行では、猶予税額の計算で現経営者の個人債務や葬式費用を株式から控除するため、猶予税額が少なく算出されます。改正後は、現経営者の個人債務や葬式費用を株式以外の相続財産から控除することに変更されるので、その分、納税猶予額が増えることになります。

今回は以上です。


清水公認会計士事務所(Shimizu CPA Office

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