新聞雑誌等で国際会計基準の話題が出ることが多い昨今ですが、かつて日本に開国を迫った「黒船」のようなイメージがあり、何となく身構えてしまうかもしれません。しかし、「敵を知り己を知れば・・・」恐れるに足りません。今回から、国際会計基準の基本について解説したいと思います。
国際会計基準とは、正確にはIFRS(国際財務報告基準)という名称になります。IFRSは、「イファース」、「アイファース」、「アイ・エフ・アール・エス」などと発音され、決まった呼び名があるわけではありません。なぜ「国際会計基準」でなく「国際財務報告基準」なのかと言えば、IFRSとは、International Financial Reporting Standards)の略称となっているためです。ただ、IFRSの中味は依然としてIAS(国際会計基準:International Accounting Standards)がかなりの割合を占めていること、また、従来からの慣行もあって、新聞等では「国際会計基準」という呼称をIFRSと同義に用いることが多くなっています。
図でお分かりのとおり、IFRSsは会計基準の集合体になっています。一番上の概念フレームワークはIFRSsではありませんが、IFRSsの規範とも言える非常に重要な規定です。フレームワークについては、改めて何回かに分けて解説する予定です。
さて、お気づきになった方も多いと思いますが、Blogの途中からIFRSとIFRSsという用語を意識して区別しています。というのも(少しややこしいのですが)、左側の会計基準であるIFRS(International Financial Reporting Standard)自体が、所謂(会計基準や解釈指針の集合体である)IFRSsの構成要素になっているからです。そこで両者を区別するため、各種の会計基準や解釈指針の集合体をIFRSs(International Financial Reporting Standards)と呼んだり、さらに厳密に(基準と解釈指針を分けて)IFRSs and IFRICsなどと呼ぶ場合もあります。
ちなみに日本語は、単数形と複数形の区別があいまいですが、英語の場合、単数と複数の違いは重要で、かなり意識して使い分けられています。日本語で厳密に表記すれば、IFRSsは「国際財務報告基準等」と表記すべきなのかもしれません。
ただ、今後は表記の簡便性や馴染み易さという観点も考慮し、厳密な区分にこだわらず、特に断りのない限りIFRSsについても単にIFRSと表記することします。また、「国際会計基準」という表現が広く使用されていることから、特に断りのない限り、「国際財務報告基準(等)」と同じ意味で使っていきたいと思います。
■ IAS(国際会計基準)vs.IFRS(国際財務報告基準)少し横道にそれましたので、図の説明に戻ります。図の右側の国際会計基準(IAS)とその解釈指針(SIC解釈指針)はいわば「旧基準」という性格で、左側の国際財務報告基準書(IFRS)とその解釈指針(IFRIC解釈指針)は「新基準」という位置づけになります。
右側の「旧基準」は、2001年に会計基準を設定する機関が「国際会計基準委員会(IASC)」から「国際会計基準審議会(IASB)」に移行したことに伴い、IASBに引き継がれた基準です。但し、「旧基準」と言っても、古い基準というわけではなく、現在まで何度も改訂が行われている現役の基準です。また、会計基準の数やボリュームの面で見ても、現在でも右側の基準の方が多くなっています。
右側の基準は古いものだと1970年代に作成されたようなものもあり、(改訂が行われているとはいえ)、基本的な考え方が時代に即さなくなってしまったものもあります。こうした基準については(手直しでなく)抜本的な改正が必要となり、IASがIFRSに置き換えられることになります。また、右側の基準で扱っていない新しい会計上の取扱いについても、左側のIFRSで新たに規定していくということになります。すなわち、全体としてみれば、右側から左側へのシフトが起きていることになります。例えば、住宅でも手入れをすればかなりの期間住むことができますが、ある時期が来ると、やはり建て替えが必要になります。また、従来とは異なったコンセプトや役割を持つ建築物を新たに建てることもあります。会計基準も基本的に同じ流れになっています。
長期的にみると、右側の基準が左側の基準に完全に置き換わるかもしれませんが、その頃には、左側の基準も「旧基準」という扱いになっているかもしれません。
(Disclaimer)
IFRSについて本Blogで記載する内容は個人的な見解であり、所属する日本公認会計士協会等の見解ではないことにご留意ください。
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